映画『ノマドランド』の評価が高い理由を考察します。
ジェシカ・ブルーダー著のノンフィクション「ノマド：漂流する高齢労働者たち」を元に作られた、2021年公開のアメリカ映画です。
ノマド（放浪者）役を、ノマドの人たちが演じて話題になりました。
アカデミー賞ではプロデューサーでもある主演のフランシス・マクドーマンドが三度目の主演女優賞で、監督クロエ・ジャオはアジア女性初の監督賞を受賞し、話題がつきない作品です。
この記事では、映画のあらすじとともに、社会背景や無料視聴方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
映画『ノマドランド』のあらすじ
ネバダ州エンパイア、リーマンショックの影響で採掘会社が倒産し、企業城下町だった町は閉鎖されてしまいます。
夫亡きあとも町に残っていたファーン（フランシス）は立ち退きを迫られ、家財をガレージに預け、思い出の品をバンに乗せ出発します。
ファーンの表情には他人を拒むような厳しさが刻まれ、そんな彼女に荒野の風は容赦なく打ち付けます。
しかし、ノマドが集まる駐車が無料のアマゾンで働き、みんなと知り合いになっていきます。
ノマドとは本来「遊牧民」という意味で、最近は自由な働き方にも使われています。
映画のみんなは「現代ノマド」とも呼ばれ、主に元中産階級シニアの車上生活者であり、過酷な季節労働の現場を渡り働いている人々なのです。
クリスマスの仕事が終わると、みんなはボブが主催するアリゾナの「砂漠の集い」に参加するようで、ファーンも誘われます。
あまり乗り気でなかったファーンですが、冬のネバダには仕事がなく、アリゾナに向かう事にします。
みんな様々な事情で車上生活を始めています。集いでは車上生活のノウハウを伝えたり、語り合ったりします。
ファーンも輪に入り、少しずつこころを開いていくのです・・・
映画『ノマドランド』が高く評価されている理由を徹底解説
ノマドの暮らしは病気や危険と紙一重の大変なものですが、それでも皆ノマドの暮らしが良いと言います。
なぜ良いのか、映画の素晴らしさの理由もそこにあります。
色々な見方ができる作品と言えますが、筆者は「境界」という視点で解説していきます。
自然と人間の境界が無い
マジックアワーと言われる日没の、雄大な北米大陸が暮れていく色彩の中にノマドの姿が溶けていきました。
美しいだけでなく、ファーンは冷たい川に身体を横たえ、激しい雨粒を顔に受けます。
自然との一体感を感じ、人の生死も自然の一部になるようでした。
「砂漠の集い」の主催者ボブは「ノマドには最後のサヨナラがないんだ。またどこかで会えると信じている」と語ります。
夫の死と思い出を引きずっていたファーンは、厳しく美しい暮らしの中で過去を受け入れ、前を向いて歩きだします。
ノマドが見ている素晴らしい世界をそのままを描き切った作品だと思います。
素人と俳優の境界が無い
ノマド役はファーンとキャンプで出会ったデイブだけが俳優で、あとはみんな本物のノマドが本人役で出演しています。
ノマドが語るようすが、素人と思えず素晴らしくてびっくりしました。
でもこれは、ノマドの人たちが頑張って演技しているのではありません。
ファーン役のフランシスは何か月もノマドの暮らしを実際にして撮影が始まり、彼女もノマドのひとりと思われたそうです。
つまりノマドが映画に登場したのではなく、映画がノマドの世界に入り込んで作られた作品なのです。
名優顔負けのノマドの名セリフを堪能できる作品です。
ノマドと定住社会に境界は無い
ノマドは特別な生き方のように思えますが、もともと一般的な暮らしをしていた人がほとんどです。
住宅の高騰が中流家庭シニアを直撃し破産も増え、お金がかかる家を捨て車で移動し働く事を選ばざるを得なかったからで、誰でも社会状況の変化で陥る可能性はあります。
映画では自然の中にいたり働いたりするファーンの姿がたんたんと描かれていくのですが、静かな映像を見ているとそれまでの人生がよく感じられ、格差を生み続ける経済社会の異様さも際立ってきます。
社会からはじき飛ばされたノマドですが、彼らは誇りを持って助け合い、働き続け自由を謳歌しています。
そこがノマドを続ける一番の理由。
自分らしく生きるノマドを描く、人間賛歌の映画となっています。
現代ノマドから見える社会背景を解説
北アメリカはもともと狩猟民族のネイティヴアメリカンが支配した場所であり、「イージー☆ライダー」のようなスタイルも有名で、放浪という生き方は伝統的で広大な大陸に適していると思っていました。
しかし、現代ノマドの背景は、昔の豊かな時代とは全く違っていました。
ノマドに中産階級シニアが多いのは住宅の高騰が原因で、破産に追い込まれるひとも多く、お金がかかる家を捨て車で移動し働く事を選ばざるを得なかったのです。
実はノマドも白人の特権と無縁ではありません。
映画では黒人も出演しますが、ノマドは100％近く白人が占めると言われています。
有色人種がノマドになって車を停めていたら、まず警察に連れて行かれてしまい放浪は難しいのだそうです。
つまりホームレスに追い込まれる、有色人種のシニアが増えているとも考えられます。
現在は白人しかできないノマドですが、格差を生む異様な経済社会で人間らしい生き方を示した、貴重な作品である事には変わりありません。
ぜひたくさんの人に見てほしいと思いました。
映画『ノマドランド』の視聴方法
『ノマドランド』の視聴はU-NEXTがおすすめです。
2日間のレンタル作品となっていますが、U-NEXTでは31日の無料トライアル期間があり、登録時に600ポイントがプレゼントされるので、無料でレンタルして視聴ができます。
ぜひこの機会に活用してくださいね！
※2021年7月8日時点の情報です。配信終了となる可能性がありますので正しくはU-NEXTの視聴ページで確認してください。
コメント